日々思うこと

パリ在住の研究者です。日々ふと考えたことを書き連ねて参ります。

「歴史気候学」と「気候に関する歴史学」

Historical climatology - Wikipedia

Environmental history - Wikipedia

歴史史料や年輪,湖底・海底堆積物などを駆使して観測機器登場以前の気候を再現する歴史気候学と,気候など環境の変化と人類の活動との連関,相互作用を説明する環境史などの歴史学。素人目にこれらは極めて近いように見えていたが,ちょっと調べてみるとどうもそうではないらしい。

フランス歴史学は,ブローデルや,気候の歴史についての大御所で今で言う歴史気候学とほぼ同様のことを研究していたル・ロワ・ラデュリを生み出しているので,さぞ両者の融合が進んでいると思いきや・・あまりそうではない模様。現在,自分の周りで「気候の関する歴史」をやっている人の大半は,過去の歴史資料に基づいて当時の人々が気候・気象の変化や極端現象をどう捉えていたか描き出すのが主流で,歴史気候学は別世界の話という扱いになっている様子である。

気候に限らず,どうもフランスの環境史研究者は,人間が環境に及ぼした影響に特に重点を置き,やはり歴史史料中心に議論を進める場合が大半であるように見える。先日読んだレビュー記事が正しければ,環境史のルーツは地理学(特に歴史地理学)とのことなので,もっと文書以外のソースを使った研究がなされていてもよいと思ったのだが。。米国や他の欧州諸国だとまた事情が違うのだろうか。

なお,歴史気候学と古気候学の違いがよくわかっていなかったが,前者が基本的に有史以来を対象とするのに対し,後者はそれ以前にずっと遡ることを前提とする模様。まあたまに両者を使い分けていない文章も目にするが。