日々思うこと

パリ在住の研究者です。日々ふと考えたことを書き連ねて参ります。

人文系研究者における「アンチ民間企業」の風潮

アカデミズム、特に人文科学系の研究者や学生と話していると、たまに「民間企業から資金をもらって研究するなんてけしからん」といった意見を耳にすることがある。より正確には、「その企業に都合のよいような結果を出しているのではないか」ということのようである。具体的な例としては(社名を出してしまうが)味の素から研究資金を得て行われた食文化関連の研究があると某地域研究者に話したところ、内容もろくに聞かず、それだけで学術研究として信用できないといったニュアンスのことを言われたことがある。

もちろん、場合によっては資金提供を行った企業にとって喜ばしいような結果となっていることも(残念ながら)あるのだろうが、基本的にはケースバイケースであろう。その分野の専門知識を持つ人間が客観的に判断を下すべきなのに、内容も聞かずに(しかも専門外なのに)すべてが怪しいと一方的に断定してしまうのは、いかがなものかと思う。それを言うのであれば、科研費でも給与そのものでも何であっても、資金の出所は政府(国家)なのだから、その国家に対して都合のよいような研究結果になっていないか?という疑問は出さないのか。中世の欧州における(今で言うところの)自然科学研究は多くが金持ちの道楽として行われていたようだが、そういった自前の資金で行われた研究以外、すべてを疑うべきではないのか。

人文系の一部には、どうやら民間企業を理由なく敵視する傾向があるように感じる。特に、大企業や多国籍企業、特に世間一般的にもネガティブなイメージを持たれがちの企業に対して、同じく疑いの目で見る傾向が強いようだ。もともと、人文科学の利点・レゾンデートルは、社会一般の価値観がどうであろうと、古典や歴史上の文献、あるいは徹底的な思索にもとづいて、人類にとって普遍的な言説・価値観を提示することが世の中で唯一可能であることだと思うのだが・・・。そういったところは世間一般と同じ価値観で眺めるのか。。

ちなみに、当然といえば当然だが、民間企業など実業界と比較的近い位置にある工学系、農学系の場合はそういったことはほぼまったくなく、ちゃんと研究内容を見てから判断する人しか(少なくとも私の周りには)いない。その代りに、たまに「社会に対して直接的に役立たない研究には存在意義が感じられない」などと、人文科学全体を敵に回しかねないぎょっとするようなことを言う奴がたまにいたりもするのだが。。。